
輸入住宅のトータルプランナー関口能典(せきぐちよしのり)です。
さて今回から三回に渡りまして、イギリスにおける住宅政策に関するお話をご紹介させて頂きます。

イギリスにおける一般的な住宅は、平均的に見て百年以上経過した建物が多いのですが、特にロンドンなどは、19世紀末から20世紀の初めに建てられたものが大半です。その中でも、市内の中心部では、18世紀に建てられた
ジョージアン様式の建物も多く残されています。そういう年輪を重ねた建物や、その集まりである集落や街路には、特別の風格があり、いつまでも見飽きることのない建築美があります。
イギリスは、サッチャー女史が政権の座に就いた1980年代から、アーバン・リニューアル(都市の再生)ということが盛んにおこなわれるようになりました。日本と違ってイギリスの都市は、どこでも均一的に近代都市としての都市を再生するという基盤ができていました。したがって再生が可能となったのです。

この都市の再生で何が行われたかといいますと、サッチャー政府の政策として、百年以上もたった一般住宅の改造に特別の融資が行われました。すばらしい事に、古い家は取り壊すことなく、またそれを修復改善することによって、二重の経済効果を生むことができたのです。これが現在日本でおこなわれているスクラップ・アンド・ビルド方式だと、古い建物をスクラップにすることで、廃棄物の処理に無駄な費用がかかるばかりでなく、家は新しくなるが伝統的な美しさは確実に失われていきます。これは二重のロスと言えるのではないでしょうか。物質的な原材料に恵まれず、しかも古い歴史的環境で暮らす私たち日本人にとって愚かなことと言えるのではないでしょうか。
Posted by nexthome at 12:02│
Comments(0)│
TrackBack(0)│
輸入住宅通信│